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末永 大輝*; 鈴木 渓; 荒木 康史; 安井 繁宏*
Physical Review Research (Internet), 2(2), p.023312_1 - 023312_13, 2020/06
近藤効果はフェルミ面近傍の軽いフェルミオンと重い不純物との相互作用によって引き起こされ、物質の電気的・熱的・輸送的性質に影響を及ぼす。一方、カイラリティ(右巻き・左巻き)はディラック粒子・ワイル粒子などの相対論的フェルミオンが持つ基本的な性質の一つである。通常の物質においては右巻き・左巻き粒子の数は均衡しているが、これらが不均衡となる系もクォーク物質や電子系において興味が持たれている。本論文では、相対論的フェルミオンのカイラリティ不均衡(有限の「カイラル化学ポテンシャル」を持つ系)によって生じる近藤効果を理論的に提案した。この効果は右巻き(または左巻き)の軽いフェルミオンと重い不純物粒子との混合によって引き起こされるが、これは有限密度(化学ポテンシャル)によって生じる通常の近藤効果とは少し異なる状況である。我々は相対論的フェルミオンと不純物粒子間の相互作用を持つ有効模型を構築し、(1)摂動計算と(2)平均場近似による非摂動的アプローチの二つの手法を用いてこの効果が実現することを示した。さらに、近藤効果に対する温度依存性・結合定数依存性・感受率の振る舞いや相転移の次数などを議論した。このような近藤効果の性質は、将来的な格子シミュレーションで検証されることが期待される。